それはシフォンケーキに似ていた

クリームクレンザーという、
使いやすい天然素材の洗剤レシピを使って、
実に20年以上掃除をしていないと思われる、
換気扇をクリーニングする機会があった。

シロッコファンに、
たっぷりクリームクレンザーを塗る。
細かいブレードに全部当たるように塗ると、
思った量の3倍のクリームが必要だった。

少しあたためて汚れの分解を待つ。
数時間経って、さあ、落としてみようか、
というところからは、あまりの汚れ落ちのすごさに、
その場に居合わせた全員の注意がファンに集中した。

ごっそり落ちるのだ。数十年分の汚れが。
もはやフィルム状になって固まった汚れが、
ポコっとはがれるように、あるいはボロボロ切れて、
少し固くなったクリームごと落ちていく。

おおまかにこそげたあとはお湯で流すと、
みるまに残りの汚れも溶けて消えていった。

固唾を飲んで見守っていたせいか、
終わったあと、ひどくのどが渇いた。
もう終わったのに、目をつぶると、
そのあとも「汚れのケーキ」が見える。
重曹のクリームに覆われたシフォンケーキ。

かつてその家に暮らしていた家族の、
記憶ともいえない、もっとかすかな痕跡のようなもの。
分解され、解き放たれてほっとしているだろうか。

ハチミツのお礼

車が、カーブの多い山道に入ると、
それまでの四角い建物の列が見えなくなり、
窓の景色がまったく変わった。

急に木立に囲まれ、無口になる。
ひとりひとりの内側で緑を感じている。

吉松さんは、
待ち合わせた郵便局の前で、
手を振って迎えてくださった。

里山には心やすらぐ空気が流れていて、
午後のやさしい風が吹き、
虫たちが飛びまわっている。

しばらくするうちに、
子供たちの表情が全然違ってきた。

驚く。見とれる。怖がる。おしゃべりになる。

だんだん元気になっていくのがわかり、
こちらもうれしくなった。

今回、対面を楽しみにしてきた日本ミツバチは、
ミツバチと思えないくらい地味な見かけだった。
なにか、茶色っぽい小さい虫(働きバチ)が、
木箱の回りにたくさんうごめいている。

吉松さんによると、この夏、
集団で逃げ出す群れが相次いだという。
新しい農薬のネオニコチノイドは、
水溶性で植物体に吸収され、かつ環境に流れ出すため、
作物と関係のないハチやトンボたちまで狂わせているのではないか。
ごく身近の自然の激変に危機を感じると、何度もくり返した。

遁走しなかった群れの巣を、
ごく近くまでそっと寄って観察する。

繊細な羽音が響く。
黄色に黒のシマシマ、というイメージがガラガラと崩れ、
ひときわ小さな体でよく働く様子に感心する。

キイロスズメバチが一匹、
巣箱のまわりをウロウロ飛んでいたと思ったら、
働きバチをひょっと一匹、捕まえて飛んでいってしまった。

ほどなく今度はオオスズメバチが一匹飛来。
しかしこちらは、カチカチと攻撃音を出す間もなく、
一目でそれと確認した吉松さんに叩き落とされる。

オオスズメバチは、
巣のそばに待ち構えて次々と働きバチをかみ殺し、
地面に死骸の山を作るので始末が悪いのだという。

キイロのほうは、体も小さいし、
下手をするとミツバチに取り囲まれて殺されることもある。
まだイーブンなのだと。

一匹の働きバチが一生涯に集める蜜は、
ティースプーン半分だという。
春先、まだ蜜が十分にないころ、
ハチたちが吉松さんのところにやってきて、
ちょっと皮膚をかじっていくという話にも驚いた。

痛くないのかと聞くと、けっこう痛いけれど、
どうも巣の幼虫のためにたんぱく質が足りないのか、
ガマンしているとの答え。蜜が取れ出すと、
かじらなくなるそうだ。

この秋は山の実りが少ないのか、
蜜を狙う熊に何個も巣箱を壊されたそうだ。
でもだからといって困ったとか、退治せねば、とか、
いっさい言わない。

この里山を訪れるたび、
人の「賢さ」について、深く考えさせられる。

遠い都会では生物多様性について大きな世界会議が行われ、
生物資源利用の公平性が話し合われた。
ある資源で儲けた者は、その資源を産出した者にも、
利益を還元していくことが大筋合意されたという。
ただし、植民地時代の事案までは遡らない、と。

ハチミツの分け前が変わっただけだ。

本当の公平性を考えるなら、
その利益はおおもとの自然に帰すのがふさわしい。

分け前とお礼は違う。

何を、どんなふうに返せばいいか、
わかっているわけではないけれども。

わからなくても考える。
ずっと考えることが大事なのだと思う。

洗いの水は美しいか

北海道からイクラの醤油漬けが届いた。
昨夕発送され、今朝到着した、
新鮮そのものの赤く美しい光の粒たち。

とりあえず小分けにして冷凍しよう、と思ったけれど、
見たとたん、気が変わってごはんを炊いた。

なんという美味しさ。
お醤油の香りもすばらしい。
まさに命の洗濯だと思った。

朝食のあと、今度は本当にお洗濯。
コースプログラムを組んで重曹を投入する。
スイッチを押しているとき、ふと声が聞こえた。

 洗いの水は美しいか?
 衣々を動かすほどに。

すばらしい経験をして、魂がよみがえるように思うことを、
「命の洗濯をした」というなら、
リアルのお洗濯だって、そのようであるのが理想だろう。

「よみがえり」とは、
死の国から帰ってくることだという。

とすれば…

洗われることこそ、現れることではないか。
魂も、衣も、より美しいものに出会い、清められて、
再びこの世に帰ってくる。

パタンと洗濯機のふたを閉める。
暗い槽の中、突然、水が噴き出す。
重曹が溶け、布にしみわたる。
その様子を想い、自答する。

 うん。わりと美しい水だと思うよ。
 今日も、洗濯物が喜んでくれるといいね。

布ナプ講座のその後(^^)

地域の教室で、女性のためだけに、
布ナプキンについての講座を開く、というのは、
案外むずかしいものなのかもしれません。

女性だけへの福祉活動では男性に対して不公平だ、とか、
女性だってそれを使いたい人は少数ではないのか、とか、
いろいろ、心配の声はありましょうが、まずは地道に、と、
布ナプ講座をスタートした、ある地域グループの主催者さんに、
その後のうれしい広がりを教えていただきましたのでご紹介します。

>参加された方のなかにお嬢さんがすでに布ナプキンを使っていて、
>「とてもいい」と聞いていたので、来ました。
>という方がいらっしゃいました。
>
>その方はご自身も水泳の先生から
>骨盤トレーニングの話を聞いていて
>「トイレで何度か止めて鍛えるといい」
>と薦められ実践されているそうです。
>
>そうすると、その方も含め訓練している方たちは皆
>夜起きなくなるということです。
>「朝までグッスリねむれるようになったんです。」
>と、嬉しそうに話されていました。
>
>年を重ねてくると
>夜にお手洗いで何度か起きるという方
>私の周りにも結構いらっしゃるのですが、
>朗報ですね。
>男性にも効くそうです。(うちの夫も・・・)
>
>こんなところにも良い事があるなんて・・・
>思いがけない話に嬉しくなってしまいました。

本当にそうですね。

布ナプキンについて考えることは、
一生役に立つ、すばらしい体の知恵を、
手に入れるきっかけになるのだなあと、
思いました。

私もうれしかったので、お願いして、
転載を許可していただきました。
Mさん、ありがとうございました(^^)

オレペで紹介のエコスプレーお問合せ

エコスプレー。
これってオレンジページさんが広めてくださっている、
手作りリフレッシュナーの呼び方。

ほかにも、別の本や雑誌では、
「エアウォッシュ」とか、「消臭スプレー」とか、
いろんな呼び方で紹介されています。

ちょっと混乱してしまうかもしれませんね。
要は「布にシュシュッと」するやつです。
乾いたらにおいもしわもとれて快適! というやつ。

それを、自然な素材で手作りしましょ、というレシピです。

その材料に、
無水エタノールを使ってください、と、
お伝えしておりましたら、
消毒用エタノールではダメ?
という読者の方からのお問い合わせを、
いただきました。

作れますよ~。
濃度の調整をしていただければ、
と、お答えしたものの、
計算しなくちゃいけないのぉ? というような、
めんどうくさいことではよくない、と思い、
消毒用エタノールを使う場合のレシピ、
作ってみました。

(1)消毒用エタノール30ml
(2)お好みの精油10~20滴
(3)水170ml
(4)重曹小さじ1杯

(1)と(2)をボトルに入れてフリフリ、
次に(3)と(4)を加えてまたフリフリ。

全部ちゃんと溶けているのを確認し、
スプレーヘッドをセットしたら完成です。

無水エタノールに比べると、
消毒用エタノールってちょっと安いんですよね。
同じ容量でも水が混じっている分だけ安い。

冷静に、エタノールの消費量から考えると、
どちらのレシピでも結局、
コストパフォーマンスは同じなのですが。
(ボトルのゴミが早く出るという意味では、
 むしろ消毒用エタノールのほうがエコ度は低い)

でも薬局に行って、目の前に、
約1000円の無水エタノールと、
約700円の消毒用エタノールがあって、
どちらも手作りリフレッシュナーに使えるとなると、
つい安いほうに手が伸びるかも、です。
理屈ではなく(^^;ゞ

というわけで私の場合、
その場しのぎ的な衝動買いをしないために、
無水エタノールを1ダースとか2ダースとか、
安いところでまとめ買いしているのでした。

ストックすると、
心に余裕が生まれます。

ちなみに、これだけあれば、
かなり酔っぱらえるはず、です。

女の子たちだけで話すと

昔はとても苦労したものです、と、
ご年配の女性が静かにおっしゃる。

ここは男子禁制の座談会。
生理と布ナプについて話している。

20代から70代まで、
世代はさまざまだけれど、
リアルなおしゃべりが炸裂する。

世の中に、ふつうの布とちりがみと脱脂綿しかなかったとき、
最初に出てきた防水仕様の生理用パンツに、
すごく感動したこと。

そのあとケミナプが出てきて、
外出時の不安からやっと解放されたこと。

なのにどうして布に戻したいの?
失敗して困らないの?
持ち歩きも洗濯も面倒なのに。

すくんでいる人の気持ち、
痛いほどわかる。
私たちもそうだった。

だからこそ、
心を開いてディスカッションしたかった。
今話していることは、
いくらネットをサーフィンしても、
本を調べても、
ほとんど出てこないこと。

でもいちばん知りたいことのはずなのだ。

1人当たりのGDPが、
1000ドルを超えると生理ナプキン、
3000ドルを超えると紙オムツが売れ出す。

日本は1970年代に最初のバーを超えた。
それより前に帰りたいわけではない。
むしろ今よりもっと快適に、
そして自然に暮らしたい。

そのための小さな気づきの数々と、
ちょっとした工夫やトレーニングのことを、
いっぱいいっぱい詰め込んで、
あっという間に90分が過ぎた。

帰り道、
空には少し欠け始めた月がふんわりと浮かび、
黒々と生い茂る街路樹と、
その間をせわしなく歩いていく人影に、
優しい光を投げかけていた。

ほんとの“ガールズトーク”に、
わいわい参加してくださったみなさま、
ありがとうございました。

女の子たちだけで話すと、
けっこういいことあるでしょ(^^)

かがやく銀の波

その日、北海道はとても暑く、
到着後の涼やかな空気を期待していた人々は、
飛行機から出るなり、え?暑いぞ、東京より暑い、
と驚きながら、それぞれの目的地に散っていった。

私といえば、迎えに来てくださった方の車で、
急いで札幌の郊外に向かっている。
到着が遅れたことで、会の開始時間の、
ギリギリに滑り込むことになりそうだった。

なぜもっと早い便で飛ばなかったか、
主催の方々に心配をかけている。
移動の計画の甘さを悔いるしかなかった。

車の前には大きなトラック。
荷物をたくさん積んでいるのか、
ゆっくり進む。

早く早く。
そんなことばかり思っていると、
迎えの方が運転しながら話しかけてくださった。

このあたりは米づくりがさかんなところなんですよ。
このごろは北海道のお米、とてもおいしくなりましてね。
もう少しすると一面、田んぼの風景になります。

その言葉でやっと、自分が今、
とてものどかで、美しい景色の中を、
走っていることに気づいた。

広い緑の野を、
一本のまっすぐな道が貫いている。
遠くに丘陵が見える。
名水が湧く小ぶりの山。

目の前のトラックの巻き起こす風にあおられて、
道ばたの草々が大きく揺れる。
そこに白や黄色、赤紫の花が混じって、
日の光のもと、かがやく銀の波になっているのだった。

今、今日、ここに来られてよかったね。

山が、緑野が、笑っている。

しばらくそれらを見つめるうち、
不思議なほど元気がよみがえってきた。
大地にぎゅっと抱きしめてもらったようで、
自然に私もほほえんでいた。

命の洗濯。
生きていることの祝福って、
いたるところにあるんだなあ。