映画「SAYURI」の中で、
置屋の女将がまだ幼いサユリのあごを持ち上げて、
買うか買うまいか考えるシーン。
「水の多い相だね」
「だから女将、いい火の用心になりますよ」
あまりにも新鮮な台詞に、
しばらく仕事の手が止まった。
コロンブス的、あるいは、
コペルニクス的ですらあった。
否、もとよりハリウッド的と言うべきか。
その後も、時折その言葉を思い出す。
水の多い相とはどんな顔か、想像をめぐらす。
むくんでいる?
たぶん、違う。
スッと流れるあっさり系の顔?
そんな単純な基準であるものか。
化粧映えする顔立ち?
方円の器に従う水のごとく、変幻自在という理屈。
アメフラシみたいな顔?
閑話休題。
先端テクノロジーの分野では、
水の本当の姿は“火の用心”どころではないという。
超臨界状態であらゆる物質を分解する。
いかな毒物も水を以てして浄められぬことはない。
そんなシンプルでスマートな技術が、
未来地球をあまねく覆うといいな、と思う。
肌を再生する力の強い、
大好きな重曹と硫黄の温泉に浸かりながら、
水の恩恵に感謝する、
長風呂の日。
あ、みずみずしいキレイな肌をしてるってことかな、サユリの顔。
――いやいや、それでは火事は防げない。
乞う、名回答!