宙の箱

新しいお米の品種について、
早くから味の評価に協力している、
面白いお寿司屋さんに行った。

米に限った話ではないが、
品種というのは、
ロウソクにともした火に似ている。

限られた時間の中で、
次のロウソクに明かりを継がなければ、
火は消えてしまう。

次々とロウソクを増やして、
あかあかと世を照らすこともできるが、
突風ですべて消え失せることもある。

いつも次の火を用意しておかなくては、
思いのほか儚いものなのだ。

宇宙ステーションで今、
若田さんたちが食べている、
山菜おこわのお米も新品種だ。

うるち米ともち米を混ぜるのではなく、
うるちともちの中間の性質を持つ新しい米を、
水だけで食べられるようにアルファ化してある。

過酷なミッションの最中でも、
おいしく食べて、元気になれるように。

願いを込めた新しい火は、
これからどんなふうに、
地上で点し継がれるだろう。

ステーションでは尿も汗も集め、
浄化して飲める水にするという。
限られた空間での暮らしには、
何のごまかしも妥協も効かない。

うたい文句ではなく、本当にきれいな水。
ブランドではなく、本当においしい米。

暗い空に浮かぶ小さな箱には、
たくさんの「本当のこと」が詰まっている。
箱の中で起こっていることは、
なにも遠くの特別なお話ということではなく、
生活を「生命を活かす営み」と成しきることなのだと、
つやつやのシャリをかみしめながら、
ひどく身近に感じていた。