2007年9月21日(金)雷にて候由候

近江のミホミュージアム。
静かな山中にある。
エントランスを入るとすぐ、
真正面の大ガラスを屏風絵に見立てた、
優雅な借景が目に飛びこんでくる。
museum
10年前に建てられた私設美術館だが、
ルーヴルの新館を設計したI.M.Peiによる、
印象的な直線の構造デザインに導かれて、
いつのまにか古代東洋美術の世界に入っていく。

織田信長の直筆書状のひとつを、
初めて間近に見ることができた。
季節の挨拶の短い手紙。
ふわり、丸くやわらかな筆さばきで、
荒々しい武将の風を全く感じさせない。
むしろ貴族的とさえ思うような字だった。

帰路途中、
源義経元服の地といわれる場所を通りかかる。
アスファルトの道路端にぽつんと立つ、
草地の中の細い石の柱だった。
時代は安土桃山からもっとさかのぼり。

青葉も、雷も、その頃から変わらない、
西日本の風土そのものだ。
日牟禮八幡宮から琵琶湖を眺める。
biwako
秋というにはまだ暑く、
光の量も多い、遅い午後。

一日ずっと、
不思議なきらめきに包まれていると感じていた。
山を下りる途中に、それは周りの樹木の、
いろいろな葉っぱからの照り返しであることに気づいた。
全く認識していなかった。
照葉樹林とは、なんと美しい植生なのだろう。
かつて北や東の国から来た者は、
まずその輝きに圧倒されただろう。

古代の日本人が、
花よりも葉を愛したわけが、
ちょっとだけわかった気がした。

昼も夜も、
夏も冬も、
いつでも分け入れば、
ダイヤのような光の粒に包まれる。
常緑広葉樹林帯。
まぶしい森。
キラキラの森。

息を吸い込むと、
忘れていた深い緑の香りがした。