今度の台風はずいぶんたくさんの雨を降らせた。
もし昨日だったら大変だったろうと思いながら、
一日おいて、正常ダイヤに戻った新幹線に乗る。
思っていたよりも一本早く出発する便に、
ちょうど間に合うタイミング。
ドアが開いて、思わずつられた。
いいや、自由席なら空いているだろうと、
気まぐれを起こしたものの、
あいにくきれいに満席。
さて、どうしたものだろう。
ラフな格好なら、
学生のときからそうしているように、
迷わず最後部の座席と車両の壁との隙間、
そう、トランクなどがよく入れてあるところに、
すぽっと入り込んでキャンプを決め込むのだけれど、
今日の、麻のワンピースでは無理だ。
立っているしかない。
デッキに移動して、
なるべく人の動きをじゃましない場所に立つ。
これから2時間ちょっと。
ならばひさしぶりに、
軽い瞑想モードでいこうか。
iPodを友達に逆腹式呼吸。
五感を刺激するさまざまなノイズを鎮める。
いってみれば、晴れた月の夜に散歩している感じ。
明かりひとつで周りを見ているような、
ちょっと変わったモードに移行する。
1時間を過ぎたころ、
どやどやとオジサマたちがあふれてきた。
それも関係ない、と思っていたが、
呼吸が苦しくなってきたので、
ふうっと“ログオフ”。
誰もたばこなど吸っていなくても、
人が増えればその場の空気に混じるものがある。
その人がそれまで暮らしてきた方法、
通ってきた場所、過ごしてきた時間が、
空間を共有することで他者の中にも入ってくる。
それをシャットアウトするのが上手になったのが、
現代人という人種かもしれない。
冷暖房の効率を上げる気密住宅のように。
けれど本当は台風のように、
あたたかいところからむくむくと湧き起こり、
物々すべて洗い流し、吹き起こす力、
それをこそ装備したいものだ、
と、くしゃみをしつつ思う。
温暖化の未来。
人も風土の申し子なれば、
せめてそのように進化せんことを。