老い

今年、父は還暦を迎える。
お祝いをしてあげたいけど・・
正直どうしていいか分からない。

8年前、私に娘が出来た時、「もう、おじいちゃんか・・・」と溜息をついていた父。
「もーそんな事でため息ついてー」って笑って済ましていた。

それから、1年半後、実家に行くと、玄関から奥まで物で溢れかえっていた。
異様な光景に言葉を失う・・
とにかく娘を母にまかせて、散歩に出かけてもらい、父と話をすることに。
目の前の光景に「異常」さを感じていない父、「キャンプの準備をしている」と
答える。
こんな状態の人を責めては逆効果・・
キャンプの思い出や、山登りの思い出を二人で話した。

後で、母にいつ頃からどうなったのか?たずねてみた。
孫の誕生が、かなり精神的にこたえたらしく、少しずつおかしな行動をとるようになったそう。最初は、キャンプ用品や山登りのグッツを、箱からだして眺めていた。
5人家族だったので、キャンプ用品も山のようにある。。
部屋中にキャンプ用品が散らばっているのに、、
新しく、帽子やサンバイザー・バンダナ・タオル・レジャーシートなどなど
5人分買ってきては部屋に置き、数日後また同じものを買ってくる。
物に固執して、母が片付けようとすると怒る。
こんな事を繰り返して、1年半後に私が実家に行くまで、物が増え続けた。

それまで、孫に会いに来てくれていた時、孫に向かって
いつも妹の名を呼んでいた。
最初は、ふざけて間違っているだけ、と思っていたけど・・
実家の状況を見たとき、間違っているんじゃなくて、
孫の存在を受け入れていないんだ・・と分かった。

父と二人、ゆっくり話しながら片付ける方向へ進みだした。
でも、問題はかなり根深いようで、一時良くなりかけてもまた元に戻ってしまう。
それから1年して、妹が帰国。
「じぃじ」では無く、「父親」に戻れるためか、私には一切連絡をよこさなくなった。

老いはそんなに悪いものじゃないと思う・・
自分の血や精神は子へ、そして孫へ受け継がれていく。
それだけで立派なんじゃないかな・・
若くなくても、やれる事はいっぱいあるよね。
逆に年をとってからやれる事っていっぱいある。
老いに背を向けないで、楽しんで欲しい・・
そんな思いはなかなか届かないまま、主人の転勤で大阪を離れた。

もう、4年も会っていない。
父は、時の流れの中を歩き出す事が出来ただろうか?
それとも、
精神的な試練を乗り越えられず、立ち止まったままなのかな?