11月2日(木)柿食えば

鐘が鳴るなり法隆寺(子規)
というわけで、奈良帰りの一行より柿の葉寿司を賜る。
ちょうど正倉院展などもあって、
いにしえの都はごった返していたそうだ。

市中の鹿がみんなおなかいっぱいで、
横になっていたという話はおかしかった。
人出が多いとエサをもらう機会も多かろう。

 菊の香や奈良には古き仏達(芭蕉)

少し前には、厚くむいた柿の皮の天ぷらを、
食べる機会があった。なかなかの美味。
その屋の主人がせっかくの食べ物、
捨てるところのないように、という思いで、
秋が来ると揚げるようになったという一品。

そして今、果物皿には幸田の筆柿という、
縦型の小さい柿がたくさんころがっている。
わりと古いタイプの素朴な柿で、
種が多く、置いてもやわらかくならないで、
果肉がシャキシャキしている。

料理に使ってみた。
甘過ぎないからサラダにちょうどいい。
ベビーリーフ、いちょう大根、松の実、筆柿。
ドレッシングはフレンチで。
もし松の実を入れないなら、
練り胡麻のこっくりした風味が合うだろう。

柿の木は、むしろ人が登ったほうがいい木だという。
子どもがしょっちゅう幹を蹴ったりこすったりして、
ささくれた樹皮が適当になめらかになるのを喜ぶという。

日の暮れ方に木に登り、
足を踏み外してはいけないと、
心配されたことを思い出す。

てっぺんから見える夕陽も柿の実の色をしていて、
小さな太陽が周りにいっぱいあるようだった。
それをひとつ、もいで降りるのが好きだった。