焼き米(やきごめ)が手に入った。
まだほんの小さな子どもの頃、
祖父母の家の台所に大きな茶筒が置いてあり、
そこに焼き米が入っていた。ちょっと固いけど、
そのまま食べることのできる不思議な米だった。
かむとじわじわ甘くなる。
よく噛んで、少しずつしか食べられないから、
食べ進めるペースとお腹がくちくなるのがずれない。
香ばしい香りも手伝って、素朴な味なのに、
スルメみたいに長く口の中で楽しめる。
おやつに一缶食べきったら、
祖母が驚いていた。
兵隊さんの携行食だったということは、
そのころ聞かせてもらった。
作り方までは習わなかったけれど。
最近、古い料理の本を調べるうちに、
焼き米はモミの状態で釜炒りし、
あとで脱穀すると知った。
うーん、これはさすがにお百姓さんでないと作れない。
水口の、少し成長が遅い米をあえて早刈りし、
焼き米にしてこれから始まる稲刈りの体力を養う。
見事な一石二鳥の知恵。
何年ぶりだろう。
もう一度出合うことができた。
あの味と、空の茶筒と、その向こうで目を丸くしている祖母に。