9月8日(金)ゾーンディフェンス

隣の席のサラリーマンが、
オシムの戦略について声高に話している。

マンツーマンになったとき、
今の日本の実力では、
たとえば世界の誰それにかなわない、
それなのにあのポジションにアイツを入れて、
まともに対峙させている。
絶対無理だと思いませんか。
まだゾーンディフェンスのほうがましなのに。

この間の試合がよほど歯がゆかったのだろう。
これだけ肩入れされ、
愛されるスポーツになったということ自体、
ここしばらくの間に遂げられた、
サッカーというスポーツの驚くべき進化。

確かにしばらく負け続けるかもしれない。
勝ってもヨレヨレで「辛勝」と言われ、
万雷の拍手はわかないかもしれない。
でもそれでいいと思う。

オシムがまだ慣れぬ若い世代の選手に、
今伝えようとしていることのひとつには、
一人が独立して背負う責任の重さについて、
ということがあるような気がする。

ゾーンでは永遠にそのことに気づけない。
誰もフォローなどしてくれないということ、
一度そのポジションにはまったら、
ひとり屹立して全てを背負うんだということを、
負けて負けて悔しくて身もだえする中で、
血肉にしていけと言っている気がする。

たぶん、そこが今私たちに一番足りないところだから。

四季の巡る、優しい国に生まれた。
放っておいても水と緑の溢れる、
小さいけれど、奇跡のような恵みの土地。

すでにここ自体がゾーンディフェンスされているんだよ。
そのことに、始めから聖域の中にいる生き物は気づかない。

あるいは気づいても、
ずっとひとりで砂漠で戦えるほどの野性を、
あとから養うことは不可能だろう。
でもちゃんと必要なときは砂漠に対処できないとね。

おびえるのではなく、むしろ、
周りをサンクチュアリに変えてしまう力をして、
この先一対一の次元を止揚できたらベストかもしれない。
もちろん、それはサッカーだけに限らず。