9月4日(月)生命線

のっぴきならない用事で、
夜の銀座に出かける。

明るい街灯の下、
人々のさんざめきはほどよい程度で、
不景気の影のいつのまにか消えていることを、
ひどく実感する。

きらびやかな装飾のビル、
客待ちタクシーの長い列、
風に揺れるまろやかなドレス姿の女性、
花売り屋台、路地奥の小さなバー、
煙草を手にしたぐずぐずの着物のマダム……。

銀座らしい光景が戻ってきましたね、というと、
マダムは、それほど変わってもいないのよ、という。

景気がよくても悪くても、
どこかのカウンターの隅に座って、
ほっこり、思索している人はいる。

付かず離れず見ている、
その距離感が銀座。
間合いが取れなくなったら、
そのとき初めて、
ここから人が去るでしょう、と。

うーんマダム、
それはすべてに通じるかも。
思考空間の確保って、
実はいちばんの贅沢だもの。

というか、究極のニーズ。
言ってみれば、精神のライフラインなのでしょうね。