公共道徳を考える!?(5/6)

4月の29日に東京に行った時、モノレールと京急、そしてJRを使った。
香川では、多分、一番頼りになる交通手段は自動車と自転車(笑)出勤も登校するのも・・・。
近くは自転車、遠くに出かけるときやや買い物なんかは自家用車、というのが一番スタンダードだと思う。
なので、ゆっくりとマンウォッチングは、こういう時にしかできない。
自分の子供に、こういうところでの教育ってできてないな、と思う・・・・大きな弱点を発見だ。
電車もバスも、旅行の時以外、一緒に乗ったことってそういえば、なかった。

その日はGWと言うこともあって、家族連れも多かった。

いいとか、悪いとか、っていう判断ではなく、いろいろと考えさせてもらえる家族に1日の間に2組出会った。
その家族にも事情やモチベーション、体調や色々な状況があると思うので、一概に判断できることでは、ない、ことなんだけど・・・。
最初にJRで出会った家族は、山手線の、ある駅からどどどっと乗ってきた。
私の横が空いていたので、子供2人と夫婦の4人家族のうち、上の子供が座った。
小学校低学年か、就学前・・・・まだそれくらいの男の子。
「足、ぶらぶらさせないで座んなさい」
「はーい、るっさいなー」
「疲れたんでしょう○○ちゃん、座れたから寝ときなさい。」
「さっきの電車で眠かったけどぉ、一回起きるとぉ眠れないタイプなのぉ、ボクはぁ、だからぁ、ねなーい」
それから、彼は、荷物が重いだの、暑いだの数々の文句を母親に投げつけ、帽子やリュックを持たせ、ジャケットを持たせ、自分だけは快適になるようにしていった。
足は何度注意されてもぶらぶらさせてるまま・・・たまに椅子に当って、がん!と、嫌な音を立て、同じ椅子に座っている人に不快感を与える。
その、嫌な音を立てた時だけ、母親は注意する・・・。
でも、子供は謝らないし、やっぱりその行為を続ける。
一方、母親は、下の子(まだ2~3歳と思われる)を、前抱きだっこしたまま、自分の荷物と、子供の荷物とジャケットをふうふう言いながら両手の肩と曲げたひじに抱えている。
頭には、自分の帽子と子供の帽子を2枚かぶりさえして・・・・。
見かねて、席を譲ろうと、立ち上がったら(まだ、譲るとも言ってない先から)男の子はごろんと横になり、
「これだったら、寝られる~」
とのたまった。おい!土足のままだぞ~!
母親と目が合って「どうぞ」と言ったらそのお母さんは、何を思ったのか
「ほら、アナタ、空けてくれたわよ」
と言って、ご主人の服をバッグを持った手で、器用につついて、小さなリュックひとつ背負ったそのご主人が座ってしまった。
小さく母親は会釈を、した・・・・これが御礼なんだろう。
そして、子供は益々ヒートアップし、下の子の髪を引っ張って起こしたり、一旦母親に持たせたリュックから飴が欲しいと言って、またとったり戻したり・・・。
母親はその都度、「えー?今なの?」とか「もう、しょうがないわねぇ・・・」などと、文句を言いながらも全て子供の言うとおりにしてあげ、確実に親は召使になっているように見受けられた。
見ていた限りでは、文句を言われながらも、結局子供の欲求は全て通ったようだった・・・。
ご主人は、上の子供も下の子供も抱くわけでもなく、奥さんの荷物を持つわけでもなく、ただ、座っていた。
時々、子供の足を上から押さえてはいたけれども・・。
席を替わった私に挨拶もお礼もなしで座り続けた。
私はこの家族より先に電車を下りたので、どこに向かっているのか、それとも帰ってるのかはもう分からなかったけれど・・・・・。

重ね重ね言うが、いいとか、悪いとか、ではない。
このご家庭の事情はまるで分からないので、表面の行動のみ見させてもらうとこんな感じ・・・・。
普通の家族だったら、と仮定すると(何も怪我してるとか、病み上がりとか特別な事情がない場合・・・・)皆がリュックを背負って、どこかにお出かけだろうと推測されるのに、何だか楽しくなさそうで、大黒柱は子供だから揺らぎまくってる・・・。
表面上の注意だけで(もちろん、しないよりはいいけれど・・・・)なぜそうしなくちゃいけないか、って子供はきっと分かってない。
親が説明しないから・・・。
くどいようだが、何もトラブルがないと仮定するなら、この場合、空いてる席には小さな下のお子さんを抱えたお母さん、仮に私が譲ったとしたら、お父さんがひざに子供を乗せるのが一番いいんじゃないの?と思う。
或いは、男の子を座らせたとしても、お父さんががっちりガードして、注意して然るべき何じゃないかと・・・。
空いている手はあるのに、使われていない。

一連の出来事は、まずいキャスティングと、いい加減な脚本でできたドラマを見たような・・・何とも言えない後味の悪さが残った。

そして、今度は帰りのモノレールの中。
綺麗に着飾っている女の子とお母さんらしき人が乗っていた。私から結構良く見える位置に・・・。
女の子は、とにかく落ち着きがなく、立ったり座ったり、お母さんにこそこそと内緒話をしたり、キョロキョロしたりしていた。
ひらひらした可愛いワンピースにレースのソックスと黒いエナメルのシューズがお嬢様っぽくって、なんだかピアノの発表会みたいな華やかな感じ。
声が大きいので、内緒話は聞こえてしまっていたけど・・・。どうやらパパのお迎えに羽田に行くらしい・・・。
多分、この子も大きめに見ても、小学校の低学年くらいだろう・・・。
そこへ、別の車両から少々高齢のおばあちゃんが移ってきた。
モノレールの中は結構混んでいて、でも、ラッシュと言うほどでもなくて、荷物を置くスペースの手すりにそのおばあちゃんはつかまって、そこで動きを止めた。
おばあちゃんで、親子がよく見えなくなった。
私の席からは結構離れていたけど・・・誰も席を譲る気配がなかったので、仕方ないな、と思い、立ち上がりかけた。
すると、さっきから見ていた親子のお母さんが子供を立たせて
「どうぞ、お座りになってください」
と、笑顔でそのおばあちゃんをいざなった・・・。
どうやら、毛頭座ろうとは思ってなかったおばあちゃんは
「いいえいいえ、おじょうちゃんをすわらせといてあげて」
と、断る・・・
あれあれ・・・・・変な方向に行き始めたぞ!と思ったら女の子がぴょこんと頭を下げて
「座ってください、どうぞ!」
と、はっきりとおばあちゃんに告げる
「本当にどうぞ、どうせ、この子、落ち着いて座っていられない気分なんですから・・・・」
と、子供の頭をなでながら、とても優しい笑顔で、再度おばあちゃんに席を譲る。
それなら、と、「じゃあ・・・ありがとうね・・・」と、おばあちゃんが女の子と母親に頭を下げながら座った。
すかさず母親が
「○○ちゃん、えらいねぇ、席を譲れるようになったこと、忘れずにパパに報告しなきゃね」
と、言いながら、頭をなでていた。
満面の笑みの女の子は
「うん」
と、やっぱりうれしそうにうなずいた。
うれしくてうれしくて・・・だから、じっとしてられない・・・・そんな出で立ちで、やっぱりピョコピョコと体のどこかが動いている。
席を立ってからも、母親に「何時?」とか「飛行機遅れてない?」と、携帯で確認をしてもらったり、たしなめられてもすぐにまた落ち着きなく動く・・・。
母親は全ての要求に答えてあげながら
「今。○時、大丈夫よ、遅れてないわよ。着くまであと○分の我慢よ。だから、もうちょっとじっとしてようね」
「定刻どおり出発って書いてるから、きっと遅れないわよ。走ったりしなくても間に合うから、走っちゃダメよ!」
と、その都度子供の頭をなでたり、肩を軽くつかんだりしながら・・・・・でも、全ての欲求を通してあげながらも注意は欠かさなかった。
しかも、子供が必ず「はい」か「うん」と言うまで、分かってるところまで戻って話して聞かせるのだった。
モノによっては、復唱もさせていた。
「○○ちゃん、飛行場に着いても、しちゃいけないことなんだったっけ~?」
「えーっとね、走っちゃダメ。怪我したら、パパと久しぶりに行くディズニーランドで遊べなくなっちゃうから。」
「そうよね、そうだったよね、走っちゃ危ないもんね」と、子供が言えた時は母親もすかさず復唱する。
しばらくすると、女の子がおばあちゃんに話しかけているのが聞こえてきた。
「あのね、○○ね、パパのお迎えに行くんだー久しぶりに、1週間も一緒にいられるんだよ。それでね、ディズニーランドにも一緒に行くんだよ!」
それを聞いていた、おばあちゃんが
「私もね、息子夫婦とおじょうちゃんくらいの孫のお迎えなんですよ」
と、にっこり笑ってその親子に話を返していた。
「じゃあ、○○とおんなじだ。久しぶりなんだね、久しぶり!」
【久しぶり】という単語がこの女の子にはマイブームらしくて、何かと会話の間に挟みたがる・・・それもうれしさのあまりなんだろうね・・・。
そういうわけがあったんだな。
ただ、お父さんのお迎えではなくて、単身赴任か長期出張で、きっと思うようにはなかなか会えなかったんだ。
見ているこっちまで、ついつい、笑顔になってしまうようなうれしさオーラを放っていた。
楽しそうな会話をずっと聞きながら、羽田に着いた。
残念ながら、私はJAL、そのおばあちゃんと親子はどうやらANA。
羽田に着くと、私は先に降りるので、そこでお別れ・・・・・見えなくなってしまった。
こんなに娘に愛されている父親を、素敵な家族に囲まれたパパをちょっと見てみたい気もしたけど・・怪しいストーカーになるワケにも行かないので、つけることはできなかった(笑)・・・。

重ね重ね言うが、どちらが悪いとかいいとかではなくて・・・それぞれの家庭生活はどんなんだろうと想像する。
後者の家庭は、パパに会えるだけではなく、ディズニーランドが相当にうれしいのかもしれないし、いつものテンションを知ってるわけでもないからこれが普通なのか、それとも全く違うのかさえ分かりはしない・・・・。
この女の子に、数十分の間、母親は随分とたくさんのことを教えていたと感じる。
それは、学校や塾でする「勉強」というものとは違うけど。
ナチュラルに、でも母親も我慢強く・・・。
私ならこんなにゴゾゴゾしてたら、きっと叱ってたろうと思うのに、叱らずに、いい子でいられるように心を配り、席を譲るタイミングや振る舞いも教えている・・・。
この子供の家庭はきっといつも満たされ、暖かな気持ちで帰ることのできる場所ではないかと思うのだ。
魔法使いのようにエネルギーを良いことに使えるように転化する事を知ってるこの母親を、同じ母親として、尊敬するし、見習いたいと思う。
同じように、子供の欲求を満たしてあげると言う点ではまったく同じな2つの家族・・・。

公共道徳をきちんと教えられていない我が家では、かなり参考になった事件。
たまには子供と電車にでも乗ってみようかな。
いつもと違う話ができそうだ。