突然、びっくり

母が、目に見えて回復を始めた。
今日、リハビリの先生と、久し振りにゆっくりと話しをした。

認知症で、私たちのことを分からないかもしれないと思っていた母は、先日、私の子供、母の孫と触れ合ってから少しずつ変わっていた。
見た目は少しだったけど、その変化たるや、彼女の頭の中ではものすごいものだったのだと思う。

連休中は、自分が病気だと気付いて、絶望さえしていた様なのだ・・・・・。
ところが、孫に触れ合って、俄然、意欲が沸いてきたようで、連休明けからは、リハビリを汗びっしょりかくくらいがんばってるという・・・。

今日、実際この目で見たけれど、がんばってるかどうかは、他人の目には見えにくいと思う。
たどたどしい動き、少し動いては息が荒くなる。
休み休み・・・・同じことの繰り返し・・・・そして、表情がまだまだ乏しいから、がんばってても、そうでなくても、見た目には分からない・・・・。
でも、ずっと担当してくれている人や、私たち家族には、それが見える。
眼力がもう、違う。
昨日までの、力なく空虚だった目は、しっかりとなにかを見つめて動き始めた。

何度かに一度は私の顔も分かるから、微笑みかけるし、声を上げて笑うことさえある。
冗談を分からなくても、その場の雰囲気が読めるようで、格段に表情が柔らかくなる。
たった8ピースのパズルを必死で考える母・・・。
歩行器で歩くことを始めた母・・・・。

どれも、一度はあきらめかけたことだった・・・。
でも、母はしっかり受け止めて、やり始めている。
それがうれしくて、また励ましてしまう。

今日は一度家に帰ってからおばあちゃんも連れて行った。

2人は固く手を握って、泣いていた。
長いこと・・・・。
母は、うまく表情は作れないけど、涙が流れ落ちた。
それで、充分たくさん通じ合った。

帰る時間になって、病院内に放送が流れた。

あと5分。
あわてて、母の爪を切って、それから病室を後にする。

途中、重篤患者室の前にいる家族を見た。
ほんの1ヶ月足らず前の私たちと同じ顔をした人達がいた。
今日は、こんな家族を私はもう、3組も見た。
病院に長くいると、こんな家族にたくさん出会ってしまう。

願わくばこの人達も、最小限の悲しみで済みますようにと思う。