南側の壁がスポンと抜け落ちたようだ。
全面一枚ガラスの喫茶店に入り、
明るい窓際で話を始める。
すぐに気づいたのは、
ひさしがないこと。
やわらかいけれど、
着実に光が差し込んでくる。
実質的で腹を割った、
すてきな時間が持てたけど、
きっとみんな、
顔が片側だけ焼けてるね。
次の打ち合わせは、
まったく窓のない部屋だった。
ビルの中、壁とドアだけの四角い空間。
だからですね。
つまりですね。
なんとか説明しようと、
後から後から不器用に言葉をつなぐ。
時間の経過がわからなくなり、
しょっちゅう携帯の時刻表示を見ていた。
最後は絨毯敷きの広いパーティー会場。
ここにも窓がない。
でも誰もそんなこと構っちゃいなくて、
中央のピカピカの銀盆に乗った大きなローストビーフとか、
一点の曇りもないグラスに注がれた水割りとか、
朱塗りの木皿に盛られたお寿司とか、
そういったものに気を取られている。
今、自分がどこにいて、
何をしているかしゃべっているか、
光は明るく照らし出す。
人間、閉ざせば内なる都合に向かいやすく。
デパートやスーパーにも外とつながる窓はない。
もしかしたら人の理性は、
毎日、ちょっとは干しとかなくちゃいけない、
おふとんみたいなものかも。
リアルであれ、バーチャルであれ、
光と風が、いつも大事な友だちなのかも。