5月11日(木)溝のある話

旧市街の路地を歩くと、
古い石畳の真ん中に向かって落ち窪むように、
オープンな溝が掘ってある。
これがかつて生活排水および屎尿の共同排水溝だったと知り、
当時の町の光景および匂いを想像して絶句。

それからはなんとなく、
溝を踏まないように歩くようになって、
我ながらその反応を笑う。
今はあとかたもないのに。

現代は鳥インフルエンザの変異による、
パンデミックが心配される世の中だが、
黒死病で大勢の人間が亡くなったその理由も、
多くはやはり人間の側の不用意にあるんだなあと、
タメイキをつきながら改めて思う。

生き物は、生きていれば必ず、
自分の生命維持にいらなくなったものを排泄する。

それを上手に始末できるかどうか。
自分の周りに人工の環境を張り巡らせるようになった、
人間という奇妙な生き物にとって、
うーむ、“尻ぬぐい”とはこのことでしょうか。