ラボの手伝いで研究発表会に顔を出す。
私の仕事は話に合わせてのOHPシートの操作。
拡大投射ではなく、スキャナーでスクリーンに映し出すが、
切り替えのタイミングでは、どうしても手が映ったり、
ズームや縦横の切り替えにもたつく。
世はパワーポイント全盛時代。
論者の年齢から考えてOHP使いを無理からぬとは思えど、
プレゼンのハンデは発表全体の印象を左右するなあ、と、
唇をかみしめる。皆がOHPだった時代は、
まったくどうってことなかったでしょうに。
がんばって! あとちょっとで結語ですよ!
夜、近々直接話をしなくてはと思っていた学生と会う。
少し太って、留年が決まったという。
親以外からけっこうな直言を聞くハメになるなんて、
因果なヤツだと思いながら、しばし忌憚のない打ち合わせ。
がんばって! これからの未来ですよ!
帰宅後、昼から何も食べていないことに気づく。
気づいたとたんに猛烈な空腹感に襲われ、
夜中に菓子をつまむ。まだリラックスしきれず、
さらに何種類かの花の精油をブレンドし、
ポットで香らせてヨガタイム。
全身の、特に下半身の筋が縮こまっているのを、
ゆっくり伸ばしていく。
吐く息を長く保つ。フーッ。
がんばって、なんて、余計なことだ。
静かなる観察者が、私の中で私につぶやく。
いつもそうして人にプレッシャーを与え、
自分にもプレッシャーを与えている。
強く息を吸い、ふたたび細く長く吐く。フーッ。
プレッシャーではなく、エネルギーを。
北風ではなく、太陽を。
心配ではなく、不動の支えを。
そう学んだのではなかったか。
ひとつ、またひとつ、イタラヌを吐き出すにつれ、
次第に心くしゃくしゃに潰れて、背骨腰骨メキメキいう。
またちゃんと人の形をしたものに戻れるだろうか。
バッハが鳴っている。
規則正しい心臓の拍動のような、透き通ったピアノの響きは、
Stadtfeldによるゴルドベルグ変奏曲。
暗がりに溶解するこの者の命綱だ。
非常階段のように、明日へ抜ける光の道を案内している。