健一自然農園さんの釜茶

自然農法でお茶を作っている20代の若者がいると聞いて、
奈良の大和高原へ出かけた岩尾明子が出会ったのは・・・

奈良の旧都祁村の作り手のいなくなった茶畑や田畑を復活させ、
その土地に合うお茶を中心に野菜なども育てている伊川健一さん。

高校生活と平行しながら農業の基礎を学び、19歳から現在の地で、
担い手のない田畑を借り受け『健一自然農園』をスタートしました。
農作業は自然に沿い、生き方も自然体で、
お年寄りの長年の知恵を借り、それを未来につなげようと頑張っています。

農薬を使わず、自然のままにできた茶葉は、
昔ながらの製法で自分たちで加工していきます。

そして昔はよく作られていたのに、加工や販売の都合などで
あまり作られなくなった種類のお茶も
自分たちが作りたいと思ったお茶は復活させてきたのです。

昔ながらのおいしいお茶を飲めるようになって喜んでいる人も多いはず!

作り手の気持ちが伝わってくるような優しく体に染み込んでいく自然茶。

無農薬で安心して飲めるお茶を作り続ける伊川さんたちをこのお茶を飲むことによって
支えていきたいとクリーン・プラネット・プロジェクトは考えています。

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人と人、人とモノがつながっていく不思議―釜茶がつくれるようになるまで

製茶工場を使わなくても、小規模な手作りプロセスで
個人でも作れるのが「釜炒り茶」です。
自分で最後まで責任を持って製茶できる「釜炒り茶」を
伊川さんは作りたいと思っていました。

今や日本茶は9割以上が蒸して発酵を止める蒸し茶で、
製茶工場で作られます。
昔ながらの釜炒りの機械は、なかなか残っていません。

釜炒り茶の生産が今も続いているのは、かつてその製法が
中国や朝鮮から九州地方に伝えられたことから、
主に佐賀県、熊本県、宮崎県です。

また、伊川さんは放置された広大な山々を管理するのに
焼畑の技術を知りたいと思っていました。

たまたま日本で唯一焼畑農法を行っている宮崎県椎葉村の椎葉さんを
知っていたCPPの岩尾は、椎葉さんと伊川さんをつなぎます。

椎葉村に焼畑を勉強に行った伊川さんは、山から降りるその帰り道、
あるお茶屋さんに釜炒りの機械がディスプレイされているのを発見!

早速店主さんに交渉したところ、あなたならと店主さんに気に入られて
譲ってもらえることになり、後日もう一度農園のレトロトラックで
釜炒り機をいただきに伺いました。

こうして、お茶の神様がシナリオでも書いてくれたかのような出会いがあって、
九州で作られている釜炒り茶が、奈良の伊川さんの農園でも作られるように
なったというわけです。

日本に緑茶が伝わった頃の原型である釜炒り茶は、渋みもなくさっぱりとして
飲みやすいお茶です。ぜひお試しください♪

《釜炒り茶の特徴》
○日常使いに便利!
・熱湯でいれても渋みや苦みがでません。番茶と比較するとよくわかります。
 お湯を適温まで冷ます時間がないときや、大人数にササッとおいしい緑茶を入れたい時には釜茶をチョイス。

○カテキン類*を多く含み、健康のためにも飲み続けたいお茶
・成分含有量でカテキン類の占める割合
 玉露(上級)10.04%、釜炒り茶(中級)18.16%、番茶12.33% 

○さっぱりとしたのど越しのいい味。
・いがらっぽさがなく、番茶の苦みが苦手な方におススメ。
・気取らない普段の3時のお茶菓子と一緒に。

○釜香といわれる釜炒り茶特有の爽やかさに香ばしさが合わさった香り。
 
○水色はうすい黄金色。
・製法によるのもので、蒸したお茶の水色のように緑になりません。
 色がうすい=味も香りもイマイチなのでは…という見た目の判断で釜茶を飲まないのはもったいない!

○茶葉
・炒ることで葉がよじれカールしてます。シンプルな機械と手作業で気持ちを込めて作られることの証明のような形ですね。

*釜茶に豊富に含まれるカテキン類のもつ効能
発がん抑制作用、がん細胞増殖抑制作用
      血中コレステロール低下作用(動脈硬化予防)
      血圧上昇抑制作用(高血圧予防)
      血糖上昇抑制作用(糖尿病予防)
抗インフルエンザ作用
      抗菌作用(食中毒予防)
      抗肥満作用(肥満予防)
      アレルギー予防
      口臭予防  
      虫歯予防など

※参考資料:「緑茶の事典」(柴田書店刊)
◇◇伊川さんにお聞きしました!◇◇

◆釜炒り茶作りで苦労したところ、楽しく思うところは?

とにかく釜で10時間以上炒り続けるので根気がいる作業になります。いかにその間、集中力を切らさないかが苦労ですが、その長い時間の中でゆっくりお茶になっていく姿と茎と茶葉が触れ合うカサラカサラという音が湖に響いて何とも趣があります。

◆焼畑は行うことができたのでしょうか?

焼畑は行おうと思っていたのですが、山に火を入れるという習慣がない関西においては、相当に周りの理解と技術力が必要で、現時点では難しいです。その代わりに、薪や炭をつかった森林を活かしながらの釜茶づくりを始めています。

◇◇伊川さんからのメッセージ◇◇

人が何かを欲した時、それが自然の道にそっていたのであれば、時間はかかったとしてもそれはかなっていくもの。「大陸から伝わった暮らしの原点のお茶を大和でもつくりたい」という想いを現実化してもらえているのは、肥料や農薬、大規模化一辺倒で大切な何かを落としてきている今の日本の茶業に(あらゆる産業に)振り返る大切を教えてくれているように感じます。
飲んだ時に風景が見えるお茶、心体が自ずから欲するお茶、そんな釜茶作りにより精進していきたいと思います。