私をあたためてくれるもの

とても寒い日が続いて、
ウールのコートやダウンジャケットが大活躍。
でも薄くて軽いベージュのダウンは、
雨に降られて水のしみができてしまった。

色がうすいジャケットだから、
雨の日は着ないように気をつけていたけれど、
帰り道に降られてしまってアウト。

クリーニング屋さんは、そのしみを見て、
水ならば大丈夫でしょうけれど、といい、でも最近ですね、と、
よく見かけるダウンのトラブルを教えてくれた。

それは服の表からではなく、
裏というか、内側から来るという。

たくさん出回るようになった安いダウン。
中には仕上げを相当に簡略化したものがあり、
羽や羽毛は鳥の体表から引き抜くものだから、
私たちの髪の毛やうぶ毛と同じように、
根元に毛根や血液などが残っている。
それを何度も洗って乾かす手間を、
かなりのところ省いてしまうのだという。

中には水鳥ではなく、陸鳥から羽を抜いて、
陸の鳥というのは水鳥と違って、
抜くと筋肉組織まで付いてくるから、
もちろん、きちんと洗浄できていればいいけれど、
コストのために、それすらはしょる例もあるそうだ。

そういったものが、
中から浮き出してしみになる。
しみまでいかなくても、
ずっとにおいがとれない。
そんな例が急増しているそうだ。

手軽に服を次々買って楽しむのもいいけれど、
一歩立ち止まって考えるとね、と、
クリーニング屋さんは、ため息をついた。

本当にそう。
やっぱり大切にしよう。
私をあたためてくれるそのジャケットは、
どこかの鳥からいただいたものだ。
たくさんの人手を介してはいるけれど、
もとは、いきもの。

ウールのコートは、
羊からいただいたもの。
絹は蚕のもの、
木綿はわたの木のものだった。

着たら必ず手入れをし、
少しずつ形を直したり、
ほころびを繕ったりして、
長く大切に着ること…。

そのことを、
感謝とともにあらためて思い出した、
今朝はまるで、
羽毛にくるまれているかように、
あたたかい、朝。