日本からいちばん近い砂漠は、
内モンゴル自治区にある。
距離にして1500km、砂嵐の発生後、
数日で日本にも黄砂がやってくる。
そのことは知っていたけれども、
衛星写真から見た黄色い渦と、
地上からとらえた巨大な津波のような砂の壁は、
生まれて初めて目にした映像だった。
車がほこりっぽくなる。
洗濯物がざらざらする。
目がしばしばする。
喉がいがらっぽくなる。
空港が閉鎖する。
十分大変だと思っていたが、
現地ではそれどころではないのだった。
砂嵐が近づいてくると人々は逃げまどう。
中に入ってしまうと何も見えなくなり、
肺を傷め、何十人と死ぬことがある。
列車は窓が割れたり倒れたりする。
去年の旅では見学できなかったけれど、
砂漠の緑化になぜ取り組むのか、
モンゴルのセルゲレンさんの話を聞いて、
少しずつわかってきた。
砂はアメリカ西海岸に達してやっと消えるそうだ。
デジタルカメラの液晶画面にまで、
入りこんで壊すのだと聞いた。
近ごろはあれこれ、
極微の存在のほうが、
コワイかもしれないなあ。