わき道をゆくのだ

山の緑が両側から迫ってくる。
ほとんど車のいないバイパスを抜け、三崎に出た。
カーラジオからは、全国あちこちの高速で、
50キロを超える渋滞だというインフォメーションが聞こえる。

強風の港。
漁船のエンジン音が響く。
長袖のセーターを着て、
晴れた海を眺めながらビールを飲む人々。

おすすめの魚屋さんで、
気が向いたときしか出てこない、
「本気のまぐろ丼」を頼んでもらった。
東京で食べたら5000円は下らないだろう、
本まぐろのとろける味わいにびっくり。
ふだんまったく執着しないけれど、
トロ好きの気持ちがわかるようだった。
丼の値段を聞いてまたびっくり。
本当にそれでいいの?

あとは散歩をしたり、コーヒーを飲んだり、
夕焼けを見たり、地魚を買ったり食べたり。
海っぱたのひとときを楽しんだ。
港に夕暮れがせまる。
misakiko

夜になって、
戻り道は長くゆるい渋滞。
巻き込まれるのを避けて、
海岸沿いや畑の間をすり抜けた。

闇に光る二つの目は、
一瞬で林に消えた。
どこかでやさしい波音が聞こえた。
ぽっかり口を開けた隧道に、
峠の風とスポーツカーが吸い込まれていった。

小ぶりで親しみやすいこの半島は、
いきいきと夏の気配を伝えてくれる。
アウトレットもテーマパークもないけれど、
けっこう穴場だと思うよ。