福井市におじゃました帰り、
駅ビルの中であわただしく、
小鯛の笹漬けを買った。
行くならおすすめと言われていたので、
とにかく手に入ってうれしかった。
そのまま刺身のように食べても、
お茶漬けにしてもよいようだった。
でも香りのよい小さな杉樽を開け、
かがやく鯛の身を見たとたん、
考えが変わった。寿司にしよう。
白米に四分の一黒米を足し、
桃色の飯を炊く。
その間にすし酢を用意する。
関西風に甘めでつやっぽく。
汁椀は間引き大根とかじめをさっと煮て、
八丁と赤味噌でかっちり仕立てる。
たきたての飯にたっぷりすし酢をふり、
そぎ切りにした小鯛と黒ごまを混ぜる。
なじんだら小鯛の寿司を皿に盛り、
京都・七味屋の七味をトッピング。
山椒の香りがクセになる、
思いきってたくさんかけておいしい、
仕上げのスパイス。
すし飯のところどころに、
淡いピンクの鯛が見えてキレイ。
ひきしまった身にぎゅっとうまみが濃縮している。
大葉や枝豆など入れても美麗だろう。
その色の取り合わせは、
八重桜を思い出させた。
臙脂色の葉脈をしたうすい若葉に抱かれ、
牡丹のようにぼってり重い花が咲く。
春の終わりの豪奢な桜。
食べ終わったら、
いよいよ初夏だなあ。