きれいな樹に出会った。
雪をかぶったように、
白い小さな花を無数に付けた、
ヒトツバタゴの樹。
トネリコの一種で、
なんじゃもんじゃの木ともいうらしい。
自生は世界でも珍しいらしく、
国の天然記念物だった。
晴れた日の朝、
一年にほんの2、3日という、
開花の風景に佇む。
樹と一緒にいる幸せ。
自分より全然大きな生命とともに、
陽を受け、風に吹かれて…。
ううーん、と背伸びして、
目の前の野生を真似てみる。
指の先のそのまた先の、
分かれた枝の葉っぱまで、
さらさらと笑うように花は落ち、
それはなんだかはかなげに見えても、
もう次の季節の実りを約束しているのだった。