2007年12月14日(金)感傷

ベイブリッジを渡り、
高速を走るうち夜が明けて、
空港ロビーのざわめきに混じっていく。

なにか胃に入れておこうと、
サンドイッチとコーヒーの店に入る。
食欲がないけど、ちょっと考えて、
エスプレッソとヨーグルトを頼む。

温かいものと、発酵しているもの。
神経を使うことになるかな、という日でも、
おなかがしっかりしていると、
いろいろなこと、ふんばれる気がする。

小さいスプーンでヨーグルトを食べ、
熱いエスプレッソを飲みほして、
店をあとにした。

待ち合わせの時間の、少し前。
海から見た夜明けと、
頬に当たった冷たい風が、
冬の感傷を運んでくる。

子どもの頃は、
なにかを感じても、なにも思わなかった。
青のグラデーションをじっと眺め、
頬の皮膚がきゅっとするのを、
手で温めたりはしたけれど。

情緒というものも、
つまりは時の傷なのだろう。
大人になるほどうずたかくなる、
ひとりびとり異なる感じ方の地層。

さて。
集合場所にした時計柱に、
待ち合わせた人々が近づいてくる。

それにしても眠そうだなあ。
そう、フライト早いもの。
でも元気を出して、
そろそろ行きますか。

傷つくことで、
なにかが壊れ、再生し、
新たに息づいていく。

このことを知っていれば、
前よりも傷を受け入れられるようになる、
というのはウソで、
やはりそれは痛いのだけれども、
しかしそのことをなんの情緒にも結びつけない、
子どもの頃の有り様をひっぱり出せるようになる。
それがいいんだな、きっと。

時間だ。
柱を見上げる。

金属の台に支えられた大きな文字盤が、
やわらかな光を放っている。
物思いをするように。