2007年10月6日(土)ものから悟るハナシ

山形県長井市の小桜館を訪問。
明治時代の貴重な洋風建築で、
地元の人々が大事に手入れし、使っている。
この歴史的建造物の中で、
集会やダンス教室、結婚式もOKなのだ。

カレンさんのレシピで木床を磨き、
白いしっくいの壁の汚れは、
そっと重曹で落とす。
会話するように。

オマエ、いつからそこにいるの?
きっと誰かの手についてたんだね。

ああ、少し、はなれ出した。

しっくいの、その位置から動けなかったものが、
重曹に巻き込まれて、はなし始める。

ワタシは、小さな子供でした。
お母さんに連れられて、小桜館にやってきた。
ママたちの習い事の間、ちょっと退屈で、
耳をかいたり、鼻をさわったり。
そのあと壁にもたれたの。

しっくいは冷たくて、しっとりと気持ちよくて、
おでこをくっつけても誰も怒らなかった。
ぺたぺた触った。手のひらも気持ちよかった。

そうやってワタシは壁に吸い込まれ、
ここに残っていた。
ホコリがつき、ゆっくりと黒ずんで、
手のひらの形、おでこの跡に浮き上がった。

でも今、溶けて布に移っていき、
あっちのシンクでゆすいだら、
あとは水に乗って地球に還っていくから、
そろそろサヨナラ。

そうやってあちこちで、
短いおはなしが終わる…なんてモノ語りを、
掃除しながらすっと想像してしまうくらい、
幾重もの陰影を感じるすてきな建物だった。

町を離れる前に、
市民の生ゴミを堆肥に農家が野菜を作るという、
モデルプランの産直市場に寄った。
小さなあけびがあって、
西の人は中身を食べるが、
こちらでは皮を食べるのだと教えてもらった。
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本当かしら、と一袋買い、
きんぴら風に炒めて食べてみた。
ほの苦くてとろっとやわらかくて、
懐かしい、でも体験したことのない、
野生的な味だった。

こういうものが昔から食べられている土地だ。
爾来、考え方も大人なのかもしれない。