霧雨の降るような、降らぬような。
調べ物をしていたら、
知らぬまに陽が傾いていた。
暮れ方のアスファルトは、
黒々と波打ち、夜の海を固めたよう。
横断歩道の信号が青に変わるのを待つ。
道路に描かれた縞模様は、
アスファルト部分がやや低いので、
そこに水がたまっている。
白線だけ踏もうと歩幅を広げると、
自然にはずむような足取りになる。
ゆっくりとステップ。
い・な・ば・の・し・ろ・う・さ・ぎ。
仲間と海にずらっと並んで、
岬までうさぎを渡した和邇(ワニ)は、
謀られたと知ってうさぎの皮を剥ぐ。
最後が肝心、と、
側溝に流れ込む水を避け、
ひときわ大きめのステップで、
対岸の歩道に着地する。
白い和邇の群れは、
今もそこかしこにいて静かに横たわり、
本当なら通れぬ海を通してくれている、
のかもしれないと考えると、
都会の雨もちょっと楽しい。