2007年3月31日(土)潟沼

一日経たぬうち、
ニシヘ、ヒガシヘ。
今は鳴子、仙台の先にいる。

火口が陥没してできたのではという、
このあたりの温泉の源とおぼしき湖に行き、
はじっこに歩み寄って湖水をなめる。

舌に残るのはお酢のすっぱさではなく、
独特のじわっと舌を刺す酸味。
なんというか、知っている味でいえば、
イオウの感じがする、と思った。

魚が棲まない水なのだ。
ペーハー2という極度の酸性湖。
青い水にはユスリカが大量発生し、蚊柱が立つ。
今は寒いゆえ、それすらいないが。
katanuma
湖は、鳴子火山の活動により約1100年前に出現したとされる。
湖底からは熱泉ガスや水蒸気が絶えずわき出している。

今は世界的にもめずらしいけれど、この湖は、
原始地球に普通にあった水の姿をよく残していると思った。

そして、ここにこの水があり、
それに触れさせていただいたのだから、
明日、昔の地球の話から始めるのは、
うん、悪くないと思った。

夕方、静かな湖面。鳥も虫もいない。
普通の水生生物がまるでいないからだ。
でも、そこには特別な生き物の連鎖がある。

古細菌の一種である好酸性菌は、
喜んでこの環境に棲んでいるだろうし、
湖の底のイオウを噴き出す熱源の周りには、
温泉微生物がきっとたくさんいるだろう。
腐敗菌がそれらの死骸を分解し、
水中をdetritus(微細有機物粒子)が浮遊する。

夏、セスジユスリカがそれを食べ、湖から舞い上がる。
強酸性の湖はそのようにして浄化される。
腐敗連鎖は分解世界の基本文法だ。

ここにも、シンプルだけど、
自然の循環が働いている。
地球と生き物は、いつもダンスを踊る。