鉄は、生き物と比べて、
とんでもなく強いんだなあ、と、
感じたことが何度かある。
鉄の道具を落としたとき、
床についた傷。
本の重さで傾きかけた棚に、
ほんの小さな鉄の支えを入れたとき。
二日前の事故直後、
偶然、現場を目撃した人が話していた。
トレーラーから落ちていたのは木くずだった。
だから産廃のトラックだと思っていたけれど、
あとで家具を運んでいたと知って驚いた、と。
鉄の箱に加わった一撃で砕けたのだ。
木くずに見えるほど粉々に。
衝撃はかたいものを通過し、
むしろやわらかいものに強く作用する。
家屋を取り壊すとき、
ショベルカーの手が、綿菓子を潰すように、
木と土でできた古い家を崩していく。
そのように直接触れなくても、
厳しく守られたやわらかいものを壊す方法がある。
その技術は善きことにも悪しきことにも使われる。
もっとも、何をもって善きというかといえば、
人の命を救うために、ということであり、
悪しきといえば、人の命を奪うために、
ということであって、人からの視点に違いはない。
ほら、あそこだよ。
大急ぎで修理してあるけど、
支柱に大きな傷が付いているだろう。
あそこにひっかっていたんだ。
まざまざと目にして、
ふだん考えを寄せることの少ないことを、
たくさん考えさせられた一日だった。