2月3日(土)地震の湯

湯船に死んだように横たわる。
源泉100%、掛け流しの湯は、
かすかにイオウのにおいがする。

面倒だからいい、と言っていたけれど、
やっぱりいいなあ、と温泉に沈む。
知る人ぞ知るこのお湯は、
最近利用できるようになったものだ。

昔から冷鉱泉が湧き、
鶴や鷺が訪れていた田んぼ。
そこに大きな地震が走った。
泉は止まり、もうダメかと話し合っていたら、
泥水がわき上がり始め、
しばらくするとちょうどよい湯加減になった。
人間たちはそのままお湯につかり、
病やケガを癒せるようになったとさ。

笑い話のようなおとぎ話のような、
でも本当のお話。
なんてことをしてくれるんだろう、
ときに自然というものは。

同じ地震が家や道路を壊し、
嘆いた人々もたくさんいるけれど、
こんな恵みを与えられてはブツクサ言えない、と、
つやつやの肌のお年寄りが笑った。

ほんとうに、ニンゲンは、
あるがままに寄り添うしかありませんね。
かなわないなあ、と湯に溶けていく。
今日は、鬼も福も内と唱える節分。