鐘が鳴るなり法隆寺(子規)
というわけで、奈良帰りの一行より柿の葉寿司を賜る。
ちょうど正倉院展などもあって、
いにしえの都はごった返していたそうだ。
市中の鹿がみんなおなかいっぱいで、
横になっていたという話はおかしかった。
人出が多いとエサをもらう機会も多かろう。
菊の香や奈良には古き仏達(芭蕉)
少し前には、厚くむいた柿の皮の天ぷらを、
食べる機会があった。なかなかの美味。
その屋の主人がせっかくの食べ物、
捨てるところのないように、という思いで、
秋が来ると揚げるようになったという一品。
そして今、果物皿には幸田の筆柿という、
縦型の小さい柿がたくさんころがっている。
わりと古いタイプの素朴な柿で、
種が多く、置いてもやわらかくならないで、
果肉がシャキシャキしている。
料理に使ってみた。
甘過ぎないからサラダにちょうどいい。
ベビーリーフ、いちょう大根、松の実、筆柿。
ドレッシングはフレンチで。
もし松の実を入れないなら、
練り胡麻のこっくりした風味が合うだろう。
柿の木は、むしろ人が登ったほうがいい木だという。
子どもがしょっちゅう幹を蹴ったりこすったりして、
ささくれた樹皮が適当になめらかになるのを喜ぶという。
日の暮れ方に木に登り、
足を踏み外してはいけないと、
心配されたことを思い出す。
てっぺんから見える夕陽も柿の実の色をしていて、
小さな太陽が周りにいっぱいあるようだった。
それをひとつ、もいで降りるのが好きだった。