夜降り出した雨が、
強くなったり弱くなったりしながらずっと続いている。
フードをかぶって歩く人、
カフェのシェードの下で雨宿りする人、
仲良く傘をシェアする人、
みなそれぞれのやり方で切り抜ける。
もちろん、雨など降っていないことにして、
ぬれねずみで歩くのもアリだ。
誰もそれを気の毒そうに見たりはしない。
すっかり洪水になっている車道のふちを、
ぴょんぴょん飛び越えながら、歩いていく。
帰るまでにはズボンのすそがびしょぬれだけど、
すぐ乾いてしまうから、とりあえず重曹だけ塗っておこう。
後に汚れが落ちやすい、
たったの一手間。本格的に洗う前に、もう、
いうなればよみがえりへの道は始まっている。
同じ雨が、少し北だともっと冷たい嵐になる。
長いコートがちっともおかしく見えない。
それはもうパリでもそうなのだから。
また新しい年の光の季節を、
静かにたたずんで待つように、
マロニエが次々と落葉する。
いつもそうだ。
新しい道の一歩は滅びと重なって、
音もなく、目にも見えず、希望にのみ輝きながら、
私たちの前に現れる。
そのつど、この世にはりめぐらされた、
なにか触角のようなものがふるふると動く。
暗在するものを指先でなでているみたいに。