携帯を変えたので古い携帯の始末を頼むと、
千枚通しのお化けのような穴開け装置が登場した。
記憶を吸い出されないよう、壊す機械だ。
さっきまで使っていた携帯に大きな穴が開くのは、
やはり少し抵抗があって、でもそうしなければ、
迷惑をかけるかもしれない人々の顔を思い出し、
店のカウンターの前、身じろぎせずに瞑目する。
ギリギリギリ…カタン!
穴の開いていく音がする。
躯体ごと基盤が壊れていく。
その瞬間、それまである秩序をもって記憶を構成した、
いろんな元素たちもサヨナラを言う。
もうすぐ9月。
小さな“終わりの始まり”の中にいることを、
肌で、耳で、感じている。
今までありがとう。またどこかで会おう。
そういえる未来があることに感謝しながら。