個人的、仕事的に軽くドタバタ。
その間に、なんとか通信環境は元通り復活。
再開の運び、ありがたく。
天地人に感謝する。
雨続きの朝、
いくつか、スイートのショールームを申し込んでいたので、
ホテルニューグランドに向かう。
日本サイズの部屋に舶来サイズの家具。
古い建物は窓を大きく取れないこともあり、
リズミカルに陰影が交錯している。
このギュウギュウ感がいいかも。
古めかしいことがわかっていて、
しかし敢えて残してある、
一所懸命な、当時の日本のおもてなし。
掃除、大変ではありません?
と、余計なことを聞く。
すると、ええ、家具の面積が広いので、とのお答え。
あちこちぶつかりながら必死で磨いています。
さにあらん。
がんばってらっしゃるんですね、と何度もうなずく。
昔のまま、を維持継続することは、
新しく作ることとは別種の努力が必要で、
しかもそれは作ると同じくらいしんどいにもかかわらず、
努力してもなかなか目に見えない。
この、練習曲線でいうプラトーのような状態を、
なぜ続けるか。どのように続けるか。どう引き継ぐか。
たいていの物事は、深く問えば必ず、
その命題を突き付けられていると思う。
少々打ち合わせ、
礼を述べてホテルを出ると、
突然の強い風にあおられ、
ビニール傘が裏返った。
おちょこの形になった傘を、
あきれて下から眺める。
無数の雨粒が集まり、
小さな湖を作り始めている。
無心に。
そう、無心に雨粒は続けている。
取るに足らない一滴ずつが集まって、
どんなことも成し遂げる。
明治屋に着いたので、
パンッと傘をはじく。
裏から見た湖が、
まだ目に焼き付いている。
龍神が湖を作るときは、
きっと最初、あんな風景を見るのだろう。
続けよと命じた主は、
やがて深まり、蒼くなる水底に、
隠れて見えなくなるけれども。