石けんの彫刻、
というものがあることを知った。
泡のようにも、
繭のようにも、
マシュマロのようにも見える、
人の背丈以上の巨大な石けん。
温かで優しい質感で、
触りたくなるようだ、と言うと、
本当に触っていい彫刻だという。
何十トンもの石けん。
展示が終わるとこの彫刻たちは、
どんな運命をたどるのか、
材料が実用性を持つだけに気になる。
削られたり、
切り取られたり、
雨に溶けたり、
しちゃうのかなあ。
いやいや。
どうしても常設展示館を作るという人に、
全部まとめてもらわれていきました。
北欧に引っ越しましたから、
実際に触るなら、
近くに行ったときにね。
どうして石けんで彫刻を?
答えは一瞬の間をおき、
宙を見つめながら返ってくる。
なぜでしょう。
ただ石けんが好きなんですよ。
それでなにか得をしようというより、愛おしい。
一緒に生きていきたいと思うからでしょうか。
温度が下がると溶けにくい、とか、
硬度が高いと石けんカスができやすい、とか、
きちんと濯がないと黄ばみの原因になる、とか。
デメリットと呼ばれるものはある。
でも、それを含めて、
単純に好きなんでしょうね、
石けんというものが。
ときどき、
ものを通じてこんな出会いをする。
好きこそ仕事の上手なれ。
ちょっと違うけど、
やっぱホントそうだ、と、
そのたびに思う。
史上最強のボランティアとは、
「好き」を仕事にしている人のことだ。
ビジネスを突き抜けて、
本当の報酬は、
愛情の先にある。