夜、用あって遠方の人を訪ねることになった。
これから行きます、と告げ、しばし車中に。
着いた頃には真夜中、
やや空腹で倒れそうな気もする。
なんとなれば、昼も夜も食べていない。
深夜になって活発になった胃が悲鳴を上げる。
オナカ、スイタ、スイタ、スイタ!
まだ帰らぬ家の主に代わって、
出迎えてくださった方としばし面談。
帰りがけ、いい匂いのする小さな紙袋を渡される。
できたてです。
朝食にでも召し上がってください。
スコーンだった。
食べ物だ!
来客と聞いて、
なにもないから、と、
夜中に焼いてくださったという。
そのお気持ちと手間を考えると、
手のひらにある袋の温かみが、
倍も強く伝わってくるのだった。
帰り道、早速ぱくつく。
ものすごーく遅い昼食兼夕食は、
干しぶどうとバターの香り。
一日の空腹を満たして余りある、
幸福な食事だった。
ありがとうございます。
なにもなくても、
おもたせにできるようなお菓子をササッと作れてしまう才能、
いっぺんで私の憧れになりました。
とってもかっこいい。
作ってくださったのが、
男性だから、
余計にそう思うのかな。
いやいや、でもやっぱり、
それが誰でも男でも女でも、
そのもてなし方、
無から有を産んで、
本当の意味で洗練されている。