5月24日(水)なにもなくて、とその人は言った

夜、用あって遠方の人を訪ねることになった。
これから行きます、と告げ、しばし車中に。
着いた頃には真夜中、
やや空腹で倒れそうな気もする。

なんとなれば、昼も夜も食べていない。
深夜になって活発になった胃が悲鳴を上げる。
オナカ、スイタ、スイタ、スイタ!

まだ帰らぬ家の主に代わって、
出迎えてくださった方としばし面談。
帰りがけ、いい匂いのする小さな紙袋を渡される。

できたてです。
朝食にでも召し上がってください。

スコーンだった。
食べ物だ!

来客と聞いて、
なにもないから、と、
夜中に焼いてくださったという。
そのお気持ちと手間を考えると、
手のひらにある袋の温かみが、
倍も強く伝わってくるのだった。

帰り道、早速ぱくつく。
ものすごーく遅い昼食兼夕食は、
干しぶどうとバターの香り。
一日の空腹を満たして余りある、
幸福な食事だった。

ありがとうございます。
なにもなくても、
おもたせにできるようなお菓子をササッと作れてしまう才能、
いっぺんで私の憧れになりました。
とってもかっこいい。

作ってくださったのが、
男性だから、
余計にそう思うのかな。

いやいや、でもやっぱり、
それが誰でも男でも女でも、
そのもてなし方、
無から有を産んで、
本当の意味で洗練されている。