5月19日(金)シャバット

昼過ぎに訪ねた家の主に、
夕方から安息日に入ると告げられた。
祈りを捧げながら夕食をとるけれど、
構わないでいてくださればいい、と。

燭台がテーブルに置かれ、
ろうそくが点される。
女性と子どもたちがてんでにおしゃべりする中、
主はその日を迎える歌を静かに歌い、
パンをちぎって一人一人の前に置く。

私の前にもパンが置かれた。
思わず合掌して受け取る。
赤ワインがたっぷり注がれる。
食卓の上のものを好きに取ってといわれ、
パンとワインと煮た野菜を口にする。

おだやかでゆったりした夕べだった。
話に熱中して気がつくと11時近くになっている。
なんて長居をしてしまったのでしょう、と、
詫びをいい、いとまごいをする。
家族で送るからと、みなで薄暗がりの中、
ギシギシ鳴るアパートの階段を降りてゆく。

タクシーに乗っても、
頭の中でさっきの歌がおぼろにこだまする。

ディアスポラ以来、
彼らの精神を一つ処に集め続けた力。
地理的な隔たりを超え、
果たし続けるいにしえの約束をかいま見て、
親から子に受け継がれるものの重さを思う。

帰ると、近くの和食の店に来いという連絡が入っている。
ふう、こうなれば我が同胞たちとも杯を交わさねばなりますまい、
と、ひとりごち、また部屋を後にする。