ノルマンディの海辺に降り立つ。
靴がダメになるかもな、と覚悟しながら歩き始めると、
思いのほか当たりがやわらかい。
長い間にすっかり丸くなった小石たちが、
すべるように転がって足を避けていく。
白い入り江には、
ところどころ打ち上げられた海藻以外なにもない。
かつてこの海岸にたくさんの兵士が押し寄せたこともあった。
そのときも小石たちはやさしく靴を避けたろう。
人間の歴史はともかく、
石たちはいつもそこにいて波にもまれ、
転がり続けている。
おしゃぶり飴のように丸まりながら、
気の遠くなるような時間をかけて海に溶けていく。
街のレストランで夕食のとき、
なにげなく頼んだ魚のスープが絶品だった。
あまり甲殻類を効かせずに魚のうまみで作ってある。
海風で少し冷えていたのか、体にしみわたるようだった。