5月6日(土)窓の外にはプロペラの羽根

初めてセントレアを利用した。
中部国際空港。
知多半島ののどかな景色の先に、
見事な空港設備が広がる。

航空会社から、
本日の機材繰りがうまく行かないとアナウンスがあり、
少し時間があいたので、
ひつまぶし弁当を買ってコーナーに座る。
カフェは最後まで私一人だった。

1時間以上遅れて用意された飛行機は、
なつかしいプロペラ機。
思わず心の中で飛行機に、
がんばれ、ご老体! と声をかける。

翼のすぐ横の席だったので、
ひときわゴウゴウと風の音が聞こえる。
飛行機がなぜ飛ぶか、
こうすると飛ぶということはわかっているけれど、
本当は科学的に説明できない、という話、
竹内薫氏の『99.9%は仮説』でだったか、最近知った。

仮説や思いこみのいい面も怖い面も、
身にしみて思い当たる。
とりあえず現実が「飛んで」くれるから、
思考が間違っていてもなんとかなってる、
というのが、掛け値なしのところかもしれない。

着陸してプロペラが完全に止まるまで約1分、
乗客全員、ベルト着用のまま羽根を眺めていた。
回転スピードが落ち、高速のときは見えなかった、
ブレードの形ひとつひとつが見えてくる。

それを見ていたら、突然、
人間のとらえている世界は、
18分の1秒を超える刺激だけを、
器用につなぎ合わせた幻想だ、
ということを思い出した。

たぶん、おおかたの現実は、
もっと高速で運動している。
だからか、変な言い方だけれども、
時間がないときのほうが自らの振動数も上がり、
かえって多くの新たな現実にログオンできるようになる。

それに、どんなに窓の外が騒がしかろうと、
見ているのは一貫して内側の静かな観察者、ただ一人だ。
それを邪魔するものは、なにもないはずだ。