4月17日(月)神経が背中側でよかった

動物の“進化”を俯瞰する資料を、
必要あってあれこれ乱読している。

原生動物、腔腸動物、扁形動物、環形動物、節足動物、脊椎動物、
どれも精巧なものだ、見事なものだ。
もちろん、私たち人間が属する脊椎動物は、
とりわけとても複雑で巧妙な作りをしているけれど。

中でも節足動物の仲間である昆虫の生き方には、
ひとつ非常に感心もし、また、大変だなあとも思わされた。
これまでもその特徴は知っていたけれど、
当たり前だと思っていたその現象に、
こんな自然のロジックが隠れていたのかと驚いた、
ということだ。

それまでの動物の進化の方向から影響を受けてのことだが、
彼らの脳は、頭から胸の部分に広がって形成されている。
頭の神経は運動に対して抑制的、胸のそれは亢進的に働く。
なのでどちらもなくてはならないわけだが、
ジレンマがひとつ。

頭から胸につながるということは、
必然的に、消化器官がその間を貫通するということだ。
彼らの体は外骨格に被われ、容積は決まっている。
脳は自由に大きくなれない。
それでもなるべく大きくなろうとすると、
「食」を制限することになるのだ。

カブトムシは樹液だけを吸っている。
蚊は動物の血液だけを。
蜂は花の蜜だけを。
クモは獲物の体液を。

昆虫の消化器官は、
「流動食」だけがそこを通るほどにそのスペースを脳に譲った。
そこまでしたから、今の多種多様な繁栄があるとも言えるし、
そのようにしても、自由な知能を発生するほどの脳は持ち得なかった、
ともいえる。

進化とは制限のことでもある。
進化と退化は同じ現象の裏表。
喪失と獲得は同時に行われる。

昆虫たちが地上に満ちるとき、
彼らが得たものと失ったものを考えた。

ひるがえって人間。そう、脊椎動物は、
昆虫のジレンマを解決済みだ。
神経系はすべて背中側を走っている。
脳の中を食道が貫くことはない。

そんなわけで、私たちは、液状物質だけでなく、
形あるものを消化する能力を与えられている。
知能を持ち得る大きな脳も。

友人たちと晩ご飯をしながら、
そんな人間の幸運について話をしたが、
残念なことに誰もありがたがらないのだった。

どうして?
こうやっておいしくモグモグ、ゴックンできるのってすごくない?
私たち、神経が背中側で本当によかったじゃん!