4月11日(火)美しい刀

守り刀が届いた。
年明けに刀匠に出合って以来、
ずっと楽しみに待っていた美しい刀だ。

お預かりするにあたり、
師匠からいくつか注意を受けた。

曰く、刀身を指で触るな。
酔っぱらって息を吹きかけるな。
仮にも切っ先を肌に置くな。

それらには理由がある。

鋼は指の脂が付くとくもり、やがて錆の原因になる。
酔っぱらいの吐く息や唾はことのほか鋼を錆びさせる。
そして、もっとも驚くべきは、
日本刀の切っ先というのは、当てるとスッとそのまま、
痛みや抵抗を感じる前に対象の物体の中に入っていってしまうので、
うっかりどこかに置いた瞬間、スライドする必要もなく切れている。
ゆめゆめカッターの代わりなどと思ってはいけない、ということ。

結局、現実的には使わないし使えない、純粋な美術工芸品ということだ。
眺めるために空気にさらすのも、これまた劣化の原因になる。

それでもうれしいのだから不思議だ。
刀に限らず、美しいものはそれだけで“武器”になる。
だからだろうか。

家の中で一等良い場所を用意して、そっと刀を横たえる。
憧れて近づきたいと欲し、自らも同じように美を備えたいと祈り、
魅入られた人一人一人に、深い内省と新しい行動を励起する。
美は優雅な最終兵器だ。
切らずに切る自己革命。
無血の革命。

ロールプレイングゲームでは、
主人公が武器を手に入れると効果音が鳴り響く。
「○○は刀を手に入れた!」と、旅の携行アイテムにエントリーされるが、
本当は刀を手に入れる者は、誰かをやっつけるためではなく、
とりわけ自らの弱さ、醜さ、儚さを知るためにそれを預かるのかもしれず。

さらにいえば、人の夢と書いて、はかない、と読む。
もしかすると「はかない」とは、はかねない、
刃金(はかね)のない状態を言うのかもしれず。

刃金。
刀身を成す美しい銀色の鋼鉄。
それが象徴的な意味で私たちの内面を貫くならば、
さぞや「筋金」が入ることだろう。

人の夢から人が切れて、本物の夢になる。
一人ではなく皆で見る夢、万人に対して光を放つ強い夢。
そういう道筋を切り開く剣の使いを得たようで、
無邪気にうれしいのだった。
そうするならもっともっとがんばらなくちゃ、
という案件は山盛りあるなれど!