農場のはずれのフカフカの枯れ草のあたりに、
こごみの群生地があると聞いて、
株分けを乞いにうかがった。
庭でも十分育つ山菜だというので、
新しい畑の隅に移植してみようと思ったのだ。
夕方の優しい日差しを受けて、
こごみたちが足の踏み場もないくらい、
あちらこちらで芽を出していた。
くるっと巻いて一株から数本、
垂直に立ち上がっている。
手でポキポキ折ってゆでるに供する人、
手頃な株をスコップですくう人。
最初の年は、植えてそのまま育つに任せるんですよ。
当たり前ですけど取って食べちゃうと、
次の年に芽を出す力が溜まりませんからね。
それから、こごみの根は横に張りますから、
周囲に少し余裕をもって植えてくださいね。
庭番のおじいさんのアドバイスを聞きながら、
いくつもいくつも株を分けてもらう。
いきなり群生して、集団で生き延びる作戦。
がんばれ、こごみ!
おじいさんは、最後にもうひとつ教えてくれた。
こごみという名前は、クルクル巻いてかがんでいるような状態から、
名付けられたと思いますよ。別名クサソテツ。
巻いているのが延びて、やがてソテツのようにすっと広がり、
シダ類らしい姿になります。
アクはなく、虫もつかず、春にたくさん芽を出し、
きれいな夏草になり、根を張り増えていく。
古い野生の植物ってエラいなあ。
畑のプロフィールを考えているが、
今日のことでますます、
極力、そういうヤツらを集めようと心を決める。
半野生、半畑。
ヒトが手を入れなくなっても、
そのまま自然に帰っていくようにして、
ほんのひととき、謹んでその土地を預かろう。
それがいい、それがいい、と、
うなずきながら暗くなる農場を後にした。
こごみたちは、夜明けに畑に移った。