どうもおかしいと思っていたのだ。
旅から帰って、車庫の車の前面がひどく土で汚れていた。
屋根があるのだし、そこまで風雨が吹き込むような、
台風シーズンではないはずだけど。
春にしては冷え込む夜、
数日ぶりにエアコンをつけて気がついた。
壊れている。本体はリモコンの信号に反応するが、
室外機が動かない。
エアコンメーカーさんに電話をする。
「ああ、そうなんですよ、
先日の春の嵐のおかげで、
ずいぶんいろんなところの室外機が壊れて、
今修理に追われています。
基盤に水が入ってしまったケースがほとんどです」
台風で吹きさらしにしても大丈夫だった室外機に、
水が入るほどの嵐とはこれいかに、と思うが、
そのとき家にいなかったので様子がわからない。
嵐すごかった? と聞くと、
「すごかったですよ」と皆答える。
しかし、どうすごかったかを表現するのはむずかしい。
「桜が全部散るくらい」とか、
「お花見の場所取りシートが飛んでいくくらい」とか、
それこそ風雅な、しかし目安にならない答えが目立つのだった。
修理は昼間、雨の降らない日に行います、と担当者さんが言う。
また基盤に水がついては元も子もありませんから。
ここしばらくの予定で、まあきっと晴れていて、
お昼過ぎまで家にいられる日を教えてください、
と訊ねられて、思わずうなる。
天気予報とにらめっこして、ちょうどそのときに予定を合わせられる、
そんな日が果たしてこの1カ月以内にあるだろうか。
それからずっと天気を気にしている。
いるときは雨が降り、いないときには晴れている。
くやしい。
そのうち必ず同期するぞ!
そう思って、けっこうマジメに空のリズムを聞いている。
序奏のように、助走のように。