京都・上賀茂の総合地球環境学研究所へ。
新しい建物は日本的なたたずまいを見せ、
静かで美しく、どこかの大金持ちの別荘に、
ふっと遊びに行ったみたいだ。
日高敏隆さん、佐藤洋一郎さん、白岩孝行さんらと打ち合わせ。
日高さんは忙しすぎて肺炎になってしまった、と咳き込みながら、
今「環境」と呼ばれているものの正体についてお考えをお話し下さる。
佐藤さんのセクションに行くとき、
秘書さんが送ってくださる。
円形の回廊が各プロジェクトごとの半オープンスペースをつなぐ。
すれ違うスタッフが「こんにちわー」と声をかけ合う。
なにしろ、壁とドアがない。
ミーティングの様子も回廊からすぐ見えて、
なんならその場に飛び込むことも可能だ。
建物および内部のインテリアには、
研究所のコンセプトを作った人の意志が明確に現れている。
すべての過程はオープンに。そしてそれぞれの研究が、
ひとつの器の中で化学反応を起こし、
全体で環になって回るように。
夕刻、ゲストハウスで暖炉に火を入れて乾杯するというので、
隣接する別棟の建物に皆でぞろぞろ歩いてゆき、日高さんを探す。
キッチンはIHだし、たばこを吸う人がまったくいないので、
点火する道具がないのだ。こんなことってあるんだ。
「前に日高さんがライターを持っていた」情報、本日も貴重なり。
しかし本日、最もセレンディピティを感じたのは、
白岩さんとの出会いだ。
実は佐藤さんの秘書、沖田さんの勘違いでアポを入れていただき、
しかしフタを開けてみたら、その日の打ち合わせの流れから言って、
「今日はそのほうがいいみたいやな」と即納得するくらい、
共通のキーワードとバックグラウンドをを持つ方だった。
「ボクの周りではようそんなことありますよ」と佐藤さん。
白岩さんも、完全なる人違いから生まれた縁に、
驚きはするが、そんなにとまどっている風もない。
変な人たち!
私もこういう出会いには驚かないが、むしろ祝福を感じるが、
同じように驚かないで楽しむ人たちとの会話はたいそう愉快だった。
夜の月が高く昇っている。
今日一日で、体はくたくたの綿のようだが、
心は光で満たされている。目の前の月のように。
明日はどんな化学反応が待っているだろう。