3月13日(月)つくろふころも、つくろふたましひ

天の回廊を冬と春が行き交う。
間の季節には、カシミヤを愛している。

たとえば肌寒いなら、幾重にも重ねて暖める。
風さえ吹かなければ、コートなしで出かけ、
もし風が吹いたら、極薄のパシュミナをふわり。
今は首の周りにくしゅくしゅ丸まっているけど。

暑いなら、重ねた衣を次々と取りのぞく。
キャミソールにカシミヤのタンクトップ1枚になっても、
二枚の布が暖かな空気をはらんで体幹をおおい、
大切な体の芯を冷やさず、かつ涼しく過ごせる。

暑すぎず、寒すぎず。
カシミヤと一緒の日は、いつも体が、
ほっとするような間春に包まれている。

この繊維を超えるような、
人工繊維は生まれるだろうか。
スポーツや医療、工学などの分野で、
人は様々な機能性繊維を身につけ、
またそれが話題になる現代だけれど。

仕事場や出先のホコリやたばこをくぐり、
家に帰り着く頃には、カシミヤたちもぐったり。
そっと鼻を当てると、今日訪れた場所のにおいがする。
ずっと守ってくれてありがとう。

ローズマリーとティーツリー、ベルガモットの精油をエタノールで溶き、
精製水で満たす。そこに指の先ひとつまみ分の重曹を溶かした、
衣類のためのお手製フレッシュナー。手に取り、細かな霧のヴェールを、
ハンガーにゆれるカシミヤたちにかけてやる。

それからエアコンをドライモードで1時間。
タイマーをかけたら部屋の電気を消し、寝室を出る。

次に部屋に入ったら、精油の香りがかすかに残っているだけ。
カシミヤたちも、あわい香りをまとってほっと息をついている。

こうやって繰り返し、繰り返し、
カシミヤも私も、一日終わるたびに繕われている。
自然の恵みにヨミガエリの魔法をかけていただいているのだ。
この繕いのとき、復活のときがあるから、
明日も元気に生きていける。
繕うとは、なんとありがたいことだろう。