2月22日(水)和洋、揚棄すべし

和に限る、と言いながら、フタを開けてみると、
存外、洋のものを選んでいたりする。
頭で思っていることと、体で“思っている”ことは違う。

「何でも買っていいよ。
自分が食べたいもの、他人に食べさせたいもの、
好きにディナーのメニューを組んでごらん」
と、デパ地下に放たれた。

食品売り場を一巡りして、
正直、途方にくれる。
ここには何でもある。

人の胃袋の一食分はだいたい決まっている。
今宵集まる人々のために、食のストーリーを組み立て、
ふさわしい料理をふさわしいポーションで用意するのだけれど。

それってけっこうムズカシイかも。
選択肢ありすぎて選べないかも。
さて、どうしよう。

結局、名の知れた和食の名店がサアどうぞとばかりに、
大御馳走をズラリ並べているにもかかわらず、
買い物の足が向いたのは、カジュアルな洋風献立の道筋だった。

まずワインセラーで赤を一本。
それから、デリカテッセンでフレッシュグリーンのサラダをたくさん。
鮮魚コーナーで出合った大きめのホウボウ一匹に、
生鮮野菜コーナーで生ハーブをちょこちょこ用意する。
これは香草焼きにするつもり。

そして。
最初一周したときからステキだと思っていた、
とあるショーケースの店へ。
まあるいパイとキッシュ、タルトが並んでいる。
その中からチーズとポテトのキッシュ、カスタードのタルトを購入。
ワンホールずつ、大きくて平たい箱に入れてもらう。

ひとつずつ、ひとり分ずつ、皿で出てくるコース料理もいいけれど、
皆でワイワイいいながら同じ食べ物をつつく食事は楽しい。
ホールで置いて、食べたいだけ好きな角度を申請しよう。
「45度でお願い」「とりあえず22.5度」「90度行ってみようかな」

和食は、その成り立ちが、ひとりひとりの前にお膳があり、
決まった皿が並んでいるところから始まっているためだろうか、
皆の前に山盛りしても、下手をすると、
かえって総菜風に見えてしまうのだな、
と、あとで自分のあわただしい無意識の決断を分析した。

キッシュやタルトはフランスの家庭料理だけど、
ホールで差し出したとき、ちょうど和食の鍋モノみたいに、
丸いフォルムが皆を笑顔にしてくれる。山分け感のあるところが、
皆をニコニコ、いつのまにか食卓の仲間にするのかもしれない。

洋のものを和のように、
和のものを洋のように、
プレゼンテーションできるといいな、と思う。
互いが見事なアンチテーゼになっている、
それゆえ、和洋は互いに自らを映す良い鏡だ。