今トウキョウで一番好きな街は、と訊ねられたら、
アキバとシナガワと答える。
どちらも街の過去と未来が極端に交錯するところがいい。
高層ビルに中空から出入りするIT・金融の新興企業族。
その下の地べたをごちゃごちゃ埋める大小の商店、外国からの客。
車も通れない細い道にやたら人があふれる。
そのアキバを数時間ウロウロ。
いくつか買い物の目的があるが、
ちょっと前にホッと腰をおろした記憶のある店が、
「ご主人様お帰りなさい」と、
突如メイドバーに衣替えしていたりして驚く。
1年前はうらぶれた通りにポツンとあったインド料理屋さんは、
今やサラリーマンで行列のできる繁盛店に変わっている。
腕のいいオーナーシェフ、ラジさんはこういった。
「私この半年で30kgやせました。見て背中。何も肉がない」
これぞホントのやせ我慢。
しかし最初は閑古鳥に見えても、やがて大勢の客がやってくる。
その先見の明こそ、古い文明の宝。
ラジさん、最近は少しは太れたかな。
最後に、モノのついでと、
耳からよくとれて気になっていたイヤフォンを買い換える。
店員さんオススメの閉鎖型。
目立たず収まりのいいタイプ。
とたんに世界は音だけになり、
頭の中、ガーシュインが駆け回る。
本日の気分でなにげなく朝ピックアップした。
このままほかに何も見ず、聞かず、
このジャジーな世界に溶ければさぞ気持ちいいだろうな、
などと考えていたら、しばらくおとなしかった携帯が、
なぜか急に何度も大声を出すわ震えるわで、
現実に戻ることをキビシク要求するのだった。
ナーダ・ブラフマー(世界は音)。
いろんな響きを聞いている。
美しくても美しくなくても、
そう感じるわけを考える。
響きの来し方、行く末を見つめて、
9thくらいまでなら私もセッションできるかな、と思う。
そうか。
アキバもシナガワもガーシュインしてるんだ。
調子っぱずれギリギリの線で過去と未来をサーフィン。
やっぱ好きだなあ。