2月18日(土)橘の日

どういうわけか、柑橘類がたくさん届く日だった。
頼んでおいたもの、おすそわけして下さったもの、庭で穫れたもの。
伊予柑、ポンカン、ネーブル、デコポン、有田みかん、セミノールと、
まるで日の光のような明るい色でキッチンが輝く。

風邪をひかないように、とお心をいただいたり、
レモンはおまけです、とメッセージが添えてあったり。
柑橘ひとつびとつを本当にありがたく、もったいなく思う。

柑橘の橘は、姫の名前。
ヤマトタケル命の妻神、弟橘姫の名にある。
荒れる海神を鎮めるため、自ら海に入って戻らなかった。
波打ち際に打ち上げられたのは、姫の櫛。

櫛もまた、姫の名前。
スサノオ命の妻神、櫛名田姫の名にある。
八岐大蛇に食べられるところ、櫛に姿を変えて助けられた。
大蛇の体から出てきたのは、アメノムラクモ剣。

この剣、縁あって受け取ったのはヤマトタケル命。
のちにクサナギ剣と呼ばれ、命のピンチを救った。

櫛に終わるヤマトの悲しみの物語と、
櫛より始まるイズモの冒険の物語と。

その間をひとつの剣がつなぐ。
剣を持つは、いずれも勇猛果敢な男神。

果実が傷みにくいよう、ひとつずつ丁寧に並べていたら、
イモヅル式に神話世界の断片が次々と立ち現れて、
しばらく空想にふけってしまった。

明日から、ミカンをむくたびに、
姫神たちが飛び出してきそうだ。
オレンジを半分に切るのは、
いにしえの剣の小さな化身。

それにしても、有無を言わさぬ物量に、
思考ってけっこう引っぱられるんだなあ。
それもまた楽し。夢うつつ、その綱引きも楽し。