プラットフォームから巨大なビル群が見える。
夕暮れ時、灯りの並ぶ空中回廊を人が行き来する。
その先に極彩色のバッタ屋、電気屋、ゲーム屋、劇場…
アキハバラの電気街はますます全体がBLADE RUNNER化している。
オモシロイ街。
以前、日経新聞の記事でお世話になったライターさんと、
初めて顔を合わせる。今日はBIGLOBEの新コーナー取材。
細かいことは『重曹生活のススメ』を読むので、とおっしゃり、
そもそもこんな活動をしている理由は、と切り込んでくる。
「胃薬で掃除できるのは不思議だったから」と答える。
重曹との出会いは1997年、かれこれ9年になる。
少しずつ、いろんな本を出版しながら、専門家に教えてもらいながら、
あちこちのフィールドに落ちている知恵を拾い集め、統合していったこと、
今もその途上にあること、同時代の横のネットワークが宝であること、
地球と私たちの体がこの「持続可能な」生活システムのお手本であること、
などを話す。
モノの見方が変わるところが一番すごいところかもしれませんねえ、
と、共に柚子はちみつ茶をすする。そうそう。ですからね、と言葉をつなぐ。
重曹=掃除というテーマはかえってモノの本質を見誤りますよ、
重曹が掃除もできる胃薬であった理由を思い出してくださいね、
とお願いし、のみならず、重曹が掃除もできる入浴剤であったり、
掃除もできるイオン飲料であることも、おもしろおかしく付け加える。
夜、会合で訪れたお寿司屋さんで珍味が出てくる。
白子焼き。
うう、私これダメなんです、なんだか脳に似ている。
この発言、さっそく白子をほおばっている同席の男性陣を震撼させる。
ではその代わりに、とまた珍味。
クチコです。なまこの卵巣。
どうあっても生殖器を食べよというのね、と板さんにジャブをかまし、
一口噛んでみる。恐ろしく強いうま味が口の中に広がる。
「ふーん、卵巣なら食べるんだ」
どうやら、からかわれている様子。
ええ。殿方は今日が満月ということ、ご存じありませんのね。
今日は特別な月、陰暦で今年最初の満月ですのよ。
そのことを思い知るために、こちらを頂きますの。
みなを煙に巻こうと不意に口を突いて出た、
芝居がかった言葉を、私の耳も聞き取って反芻している。
本当にそれを思い知るためではなかったかと、
どこか不思議な感覚を覚えながら。
ビックリ箱はいろんなところに仕掛けられている。
人生は、電気街以上にオモシロイ。